今年度18例目の院長・事務長・総看護師長推薦の「発信賞」に輝いた、整形外科医師の記事です。
先日、整形外科の外来で診察中に、関節リウマチの生物学的製剤のお話をしていたところ、「これからは大変になるし治療費を払うことが難しくなるかもしれない」と自然と会話が始まった。
話の流れで「高額療養費制度」の話題になり、彼女は深いため息をつきながらこう言った。
「テレビで見たんだけど、また自己負担が増えると言っていた。年金暮らしには本当に厳しい……」
高額療養費制度は、元々は一定額を超えた医療費を後から払い戻す仕組みで、特に慢性疾患や手術を要する患者にとって大きな支えとなっている。
最近は外来でも手続きを行い上限以上は支払わなくても良いようなケースもある。
しかし、制度の「見直し」が進む中で負担額の増加が懸念されている。
例えば、70歳以上の外来負担限度額が引き上げられたことで、長期的に治療を受ける人々にとっては実質的な負担が増えることになる。
一部報道だと受診抑制を見込んで医療費を抑える予定だったというような報道もあり、事実だとすればその制度見直しはほぼ「切り捨て御免」ということだろう。
その女性も、関節リウマチで生物学的製剤の治療を受けている。
「治療を続けないと関節痛でつらくなるけど、負担が増えたら通院を控えるか、通院のために働く時間を増やさないといけない」という。
その言葉に、私は改めて制度改定の影響の大きさを感じた。
治療のためにあまり動かしてほしくない関節を使用して金銭を稼ぎ、それは全て医療費に消える。
なんて矛盾しているのか。
医療費の適正化は重要だが、患者にとって治療を続けることが困難になれば、本末転倒ではないだろうか。
今後の医療制度のあり方について、もっと多くの人が関心を持ち、財政を国民のためにどのように使うのかをしっかり見て考えていく必要があるだろう。