vol.65

「母のように優しく、強い人に」 リハビリ科 言語聴覚士

院長、事務長、総看護師長推薦の発信賞に輝いた、言語聴覚士の記事です。

「県外に住む私の母は現在71歳。高校の看護科を卒業後、ずっと看護師として働いていました。
母は、私が医療従事者を目指した原点です。
日勤、夜勤と病院勤務をこなす中で、中学、高校と部活の朝練で朝5時半に家を出る私よりも前に起きてお弁当を作ってくれ、夜勤の時は夜勤明けに学校の靴箱までお弁当を届けてくれる、夜勤明けで眠いだろうに参観日にも来てくれる、子ども思いの母でとても尊敬しています。

今はお盆と年末年始ぐらいしか帰省はできなくなりましたが、今年のお正月も実家でいつものように姉家族と共に楽しいお正月を過ごすと思っていました。

しかし母に異変がありました。
頸部にしこりができていたのです。
その時はまだしこりも小さく、お正月明けに病院を予約しているとのことで、大きな病院だし大丈夫だろうとあまり気にしていませんでした。

しかし病院での検査結果から確定診断とはすぐにはならず、しこりはどんどん大きくなりました。
B病院を経てようやくC病院の血液内科で悪性腫瘍と判明した時には痛みも出てきており、腫瘍で喉が圧迫され眠れないほどにまでなっていたため即入院となりました。
抗がん剤治療が始まってからは腫瘍は小さくなり自宅退院できた今は通院をしています。

今でこそ、食欲出てきたよ、ご飯が食べられるようになったよ、体重が増えてきたよ、など母からの報告を嬉しく思いつつ、あの時感じた不安や心配、かかった病院や担当医師に持った気持ちなどの経験を今、患者様のご家族の気持ちにより重ねるようになりました。
自分にとってはたくさんの患者様の一人でも、相手にとっては唯一であり、当たり前ですが関わる者として大きな責任と信頼が必要になってきます。
母の病気は、これからも自分にとっての医療の在り方やできることを考え続けなければならないと、あらためて思う大きな出来事でした。

最後に、癌だと分かったとき母が姉と私に言いました。
「病気になったのが私で良かった」「あなた達じゃなくて良かった」と。
私も母のような優しくて強い人間になりたいです。」