vol.98

「希望を引き出す支援を」 連携相談室 社会福祉士

2・3か月に一度、脳血管疾患や整形領域のパスを使った連携についての研究をおこなう高松東讃地域シームレスケア研究会がおこなわれていて、当院からも連携相談室やリハスタッフが参加しています。

先日の研究会は公益社団法人日本脳卒中協会の「脳卒中スピーカーズバンク」メンバーである松永知子さんの実体験の講演でした。
ダンサーとして活動していた松永知子さんは、42歳の時、脳出血に見舞われ、重度の左半身麻痺となりました。突然の発症でした。
医師からは「3年後に杖で歩けるようになればいいほう、ダンスは難しい」と宣告されます。
しかし、「もう一度ダンスのステージに上がる」という強い信念と、作業療法士でもあるダンスの師匠からの「脳卒中は脳からの指令が届かないだけで、身体に障害があるわけではない。運動麻痺は時間との勝負で、最初の3か月の頑張りが重要」」というアドバイスを胸に、入院直後から右側の動きを左側に転写するイメージトレーニングとベッド上での運動を自身で開始されました。
その甲斐あって、リハビリ開始から2週間足らずで歩き始め、医師を驚かせたそうです。
再発防止の手術後に麻痺が一時戻るなどの困難もあったようですが、「リハビリで回復する可能性がある」と信じ、精力的に取り組み、退院後もリハビリ続け、職場にも復帰されました。
退院から1年半後には、強い意志と周囲の応援で、再びダンスのステージに立ったそうです。
今も感覚麻痺は一部残存しているものの運動麻痺はほぼ回復したそうで、確かに歩行時の姿勢や講演をされている松永さんの姿からは重度の麻痺があったとは全く想像できませんでした。

松永さんからは医療者に対して「安易な励ましはできないのかもしれないが、患者を絶望させないでほしい。希望を引き出してリハビリをどんどんしてほしい。」「脳卒中のリハビリは発症後、急性期にいっぱい取り組んだほうがいいのにこの時期のリハビリは少なすぎる」と訴えられていました。

バイタリティ溢れる松永さんの講演を聞いて、MSWとしても「絶望でなく希望を引き出す」支援ができるように研鑽しなければと思いました。